生命誕生の瞬間にも重要な役割を果たす「糖鎖」
糖鎖は、核酸(DNA・RNA)、タンパク質に続く第3の生命鎖ともいわれ、タンパク質や脂質と結びつき、糖タンパク質や糖脂質となって生物の細胞表面に存在しています。そして、タンパク質の安定化、活性化、輸送先の制御のほか、細胞間のコミュニケーションをとるためのアンテナの役割を果たしています。すなわち糖鎖は、すべての細胞表面を産毛のように覆っていて、細胞間の認識や相互作用に関わる働きをして、ヒトの細胞60兆個の社会をコントロールしているのです。
この糖鎖に異常が生じると細胞社会は混乱し、例えばウィルスや細菌などが体に侵入しても、免疫細胞がそれを識別できなかったり、戦闘態勢にならなかったりと、スムーズな対応ができず、病気を悪化させてしまいます。
人間の卵子は、人間の精子しか受け付けません。
それは卵子の表面の糖鎖が、同一種かどうかを認識しているからなのです。卵黄には卵黄膜があり、受精はこの膜を通して、お互いの糖鎖が認識し合って行われるのです。つまり、お互いに正常な糖鎖なら、遺伝子情報も瞬時に読み取って受精するわけです。しかし、糖鎖に異常があると正しく認識できず、受精は行われません。ですから、糖鎖は、妊娠のための重要器官ともいえるのです。
糖鎖栄養素が不足してしまった場合、女性は卵子の受精能力が低下し、男性の場合は精子が奇形になることもわかっています。
高齢になると、卵巣機能不全により卵子の状態が変化しますが、糖鎖の異常もその一つです。